感謝とともにまもなく開幕

気力が追いつかない、ということがあまりないほう
というか、
いつも比較的気力で乗り切ってきたけど、
今年の企画を立てるにあたっては、
いろんなことがギリギリになってしまい、
なんでこんなこともっと早くになんとかしなかったのかな、
っことがたくさんあった。

単純に忙しかったというのもある。
すこたんが終わってから今回の稽古が始まるまで、
けっこうな仕事をした。
クオリティは下げたらいけない仕事ばかり。
いや。下げていい仕事なんて基本としてないけど。
しかも資料たくさん読まないといけないものばかり。
不安のあまり資料が毎日、どんどん届き、
届いたら読むしかないのだけど、
なんでしょうね。あの。資料を読んでるときの
仕事してる実感のないかんじ。
正直、いま、このブログを書いているほうがずっと、
仕事しているという実感を得られる。

でもまあ6月現在、書き仕事に関しては、
「Secret War-ひみつせん-」含めて、
いちおうのひと段落はついている。

それと並行して進める
企画に関しての仕事が珍しく辛かった。
毎日、あれとこれとそれをやらないと
(主にメールか電話)
と思ってはいるんだけど、
気がつくと日が暮れ、深夜になっている。
なぜかたまにやってくる、
とつぜんメール書ける日や電話できる日に
書いたり掛けたりするしかない。
もともと得意なほうじゃないけど、
それにしたって目にあまるていたらくだった。

愚痴めいたことはこれくらいにして。

稽古して、小屋入りして、
まもなく本番なんだけど、
もちろんわたしの準備の悪さを起因とした
問題がゼロというわけじゃないけど、
稽古場がとてもとても素晴らしかった。
これに甘んじちゃいけなくて
来年度はもう少しきちんと早めに準備したいけど、
ほんとう助かりました、という稽古場だった。

諸事情で稽古期間がいつもより少しだけ
短かったのだけど、
その短い稽古期間、まったく稽古が停滞しなかった。
俳優からの提案で何度もテキストを変えたし、
演出も変えた。
わたしが俳優に対してできた仕事もちゃんとあったと思う。
みんなで持ち寄って作品が磨かれていった。

三浦透子ちゃんとの作業はいつもほんとに楽しくて、
ラストの大切なあたりはなんどもなんども話して、
トライして、
これでよさそうだね、が一致して、彼女が笑顔になる。
これでこのシーンは生きたな、とわたしも思う。
そんなふうに稽古場が一歩前進する瞬間が何度も何度もあった。
そんな風に稽古場のかたちを作ってくれました。

大谷亮介さんのチャーミングがただごとじゃなくなってきた。
すごく複雑ですごく難しい役だけど、
その難しさを表現したいわけじゃない。
でも大谷さんがすごいなあって思うところは、
おそらく自分で考えてらっしゃる以上に、
いつのまにか役のコンテキストがはいったうえでの
明るさや笑顔になっていることだ。
いちばん年齢がうえなのに誰よりも素直で誰よりもひたむき。
そんなチャーミングには誰も勝てない。

佐野さんは、ザ・佐野っていう役なんだけど、
役については、劇場でお確かめください、としか言えないです。
だって軍人でスパイで中間管理職で、やや悪ですよ。笑
なんだかんだと演劇が好きなひとなので、
稽古場にいてとても楽しそうです。
佐野さんが楽しいなら間違ってないってことかな、
と思えます。

ししどさん。いつもいちばん若い役をやってもらってる
イメージだったんですが、
ちょっと待って、ししーはもう大人よってわたしが気づき、
今回、大人な役を書きました。
すごくいいんですよ。とても素敵なんです。
どの役が好きとか作家はあまりないものなんですが、
ししどさんの役は、とても好きです。
こういうある意味地味な女性を素敵に演じられる俳優が
増えていけばなって、地味な役が好きなわたしは思います。

森下亮さん。
なんでしょうね。森下さんがそこにいるだけで、
座組のポジティブさが、3倍くらいになるかんじ。
戦時中なんだけど、
いわゆる戦時中というイメージとも違う時間を生きた人たちの
ニュートラルを体現するような役で、
いないとゼロ地点がわからない、
そんな大切なゼロポジションをとても楽しそうに
演じてくれています。

北浦愛ちゃん。
初めて組みましたが、すごく準備して、
でもなんの準備もしないで手ぶらで来たみたいに
演じられる俳優さんです。
お芝居のなかでいちばん子供から大人になる役なのですが、
そこもしっかり演じてくれています。
前半の無邪気なかわいい笑顔から、
ラスト付近の笑顔との差異、ご注目ください。

松村武さん。
いや。もうやっぱり凄いです。
演出面でも控え目に、でも気になったことを
指摘してくれて、作品の底上げをしてくれました。
自分のやったことを引き受けて、
いつも複雑な思いを持ちつつ、それを表に出さない、
難しい役だと思うのですが、
そのすべてがぜんぶちゃんと見える演技です。

宮崎秋人くん。
どの役もそれはそうなんだけど、この役しくじったら
作品死ぬなって役はあるもので、
それが宮崎くん演じる桑沢です。
ここのところ書いて演出しているわたしが
息を呑むような芝居をしてくれていて、
本番とてもたのしみです。
テキレジとかのアイデアも出してくれて、
マジメさと自由さがとてもいい塩梅で同居する俳優さん。
注目していただきたいです。

坂本慶介くん。共通の知人から、
演出家がみんな慶介に夢中になっちゃうんです、とは聞いてました。
そんなことにはならないぞ、と思ってたのに、
初日から夢中でした。
そして6月7日現在いまも夢中は継続しており、
最初の夢中とはまた質の違う信頼を伴った夢中になっています。
わたしの言ったことで彼には思いもよらないことも
たくさんあったと思うのですが、
ちょっとへえっそんなこと言うんだって顔をして、
わかりましたって言って、ぜったいに演技を更新してくれます。
しかも新鮮な文体で。やりとりがほんとにたのしい。

いや。書きだしたら長々俳優のこと書いてしまったけど、
書きたかったのは稽古場にいてくれるスタッフさんの
ことでした。
こんな来る人来る人素晴らしいってことあるのかな、
っていう、
日々、マンパワーという名の
ギフトボックスが届くような稽古場で、
すべてのお仕事に感謝しかありません。
なので稽古場常駐のスタッフさんをご紹介。

なんでかなあ、と思ってたんですが、
能力とかマジメさとかもちろんあると思うんですが、
みんなほんとに演劇が好き。たぶん。

隣で誰より座組のことを愛してくれた演出助手の公平くん、
座組愛のライバルでした。
長く小劇場の座長さんもやってらしたので、
小劇場の至らぬところも目をつぶりつつ、
とにかくポジティブにやってくださってありがたい
しかありませんでした。

演出部さんのスケジュールの関係で、
舞台監督をしてくれる金子裕明さんが稽古場に
ずっといてくれました。
芝居のことよく気が付く人だな、と思ったらそもそも
演出もやられるんだそうです。
最後は衣裳の相談とかまで乗ってくれてました。
頼もしかったです。

途中合流の演出部 津村さんは頼りがいのある
ハイパーそうな空気感を滲みださせてます。
まだそんなにお話できてないんですが、
ザ・プロってかんじです。
作ってくれた小道具が凄すぎて俳優がビックリしてました。

衣裳進行にお声がけするのがほんとうに遅れました。
大切で、いいひとはすぐいなくなっちゃうポジションなのに。
なのに来てくれた小林さんが素晴らしくて、
なんの不安もなくお任せできるってこういうことかな、
と思いました。
最小の説明でぜんぶわかってくれて、動いてくれています。
小柄で可愛い方なのに、稽古場搬出のとき、
めっちゃ重いリノリウムをひょいっと運ぶ姿が
素敵すぎました(衣裳さんなので運ぶ必要はない)

音響オペレーターの岡田悠さん。
お芝居好きなんですねっていうのが、
オペでわかるものですね。
今回プラン的にも難しいのですが、
繊細に出していただいて感謝です。

稽古場についてくれた制作は及川晴日ちゃんと
吉乃ルナちゃん。
わたしの手配がこちらも遅くなったせいで、
負担のかかるスイッチもありましたが、
ふたりともとても素敵に場にいてくれて助かりました。

この他、中国語指導のイーランさん、
所作指導で急遽来てくれた川口圭子さん、
みんなホレボレするようなプロのお仕事をしてくださいました。

ほか毎回やってくれているスタッフが素晴らしいのは、
長すぎるので思い切って(?)省略します。

最後に。
これもギリギリまで悩んでいて、
それなのに素晴らしい布陣になったアフタートークゲスト
をご紹介します。

6/10 13時の回が ジャーナリストの日野行介さん
日野さんにお願いできないかしら・・・と思っていたら、
別件で偶然連絡が来て
→しかもほとんど連絡なんて取りあってないのに
そのまますぐに決めていただきました。
調査報道といえばあたりまえって思っちゃうかもしれませんが、
とにかく信じられないくらい地道な調査で、
ブラックボックスの中身を可視化していくようなジャーナリスト
です。秘密戦と絡めたお話ができると面白いなって思ってます。

6/16 13時の回 緊急トークです
わたしと三浦透子さんでお話します。
ふたりでしっかり話せることが稽古前にお会いしたとき
くらいしかなかったので楽しみです。
今回の作品のことばかりじゃなくていろんなこと聞きますよ。
わたしも取材を得意とする劇作家ですので。笑。

6/17 18時30分の回
登戸資料館館長の山田朗さんに来ていただけることになりました。
これはみなさん楽しみですよね。楽しみにしてください。
わたしも楽しみです。

あちこち感謝しながら、明日開幕します。
お待ちしております。

玄関を整えてみる

ほんの少しだけ時間ができた2日間。
もちろん書き仕事はあるんですが、
少しは必要。気分転換。
なので一日は、芝居と映画をたくさん見まして、
もう一日は、DIYしてみました。

気になっていたのは玄関。
玄関に鞄とコートと
わたしの場合は帽子を置けば
部屋が散らからないのです。

しかし。

タイルが暗くて気になる。
コート掛けが、
カリモクのかわいいヤツなのに、
コートで覆われている。

ほんとは床はタイルにしたかったけど、
そもそも今、このグレーの床も、
クッションフロアみたいなのだし、
賃貸だから現状復帰必須だし、
なんかしくじったとき怖いしで、

メルカリで、
とても安く、
おそらく売り主さんが使った残りモノの
テコラッタっぽいタイル的なフロアシート
を購入しました。

コレです。
コイツで練習して、次の機会にもう少し
ステキにしよう。

で、どう貼るか作戦立てて、
切ったり貼ったりしたんですが、

どうすんだよ。
こういうところ。

まあ仕方ないので、切りまして、

奇蹟的にハマった!
45cm四方のブロックタイル的なかんじで、
扱いやすいかな、って思ったんですが、
パーツとパーツのスキマが気になったりして、
なのに意外に神経質で、
できるだけスキマ作りたくないなーって、
タイヘンだったので、
次はできるだけカットしなくていいのにしよう。

で、コートね。
コート、もうすぐいらなくなるけど。

玄関ドアに吊ればいいかもと思いました。
で、吊ったらシュールになったけど、
まあいいやって思いました。

それから鞄をカリモクのコート掛けに下げました。
グレーの鞄が多くて、
まったく可愛くなりませんでした。

でも、まあ。
散らからないための工夫だから仕方ないか、
って思いました。

まあまあがんばったけど、
別に劇的に素敵にはなりませんでした。
でもちょっとは、明るくなったかな、
あと、お店っぽく見えなくもないか、
地元のリサイクルショップくらいには見えるか、
ということで、
トップ画像が全景。
そのうちまた手を入れていこうと思います。

いつからはじめてもいい

なにが起こっているのだろうと毎日思いながら、
粛々と演劇や創作の準備はするしかない。
時間が前へ進んでいく。
情緒の問題は大きい。揺れる。
でも、そこを少し切り離して、考えてみる。

実際戯曲を書いていてよくあるんだけど、
自分の脳のなかに、
宇宙みたいなものができる瞬間を感じることがある。
記号みたいな資料を読み続けて、
あるとき、今調べているそのことが、
ひとつのつながった体積をもった何かになる。
場所に行った瞬間にそれが起こることもあるし、
人の話を聞いてるときのこともあるし、
ひとり自分の部屋で書いているときのこともある。

脳科学の本で、
なにかについて調べたりしてると、
あるとき、脳細胞同士がシナプスでシュシュッとつながって、
ひとつのスペースみたいなものを形成する瞬間があって、
そのとき、ひとは理解したって感じるらしい。

考え続けてないとその瞬間は訪れないし、
知識も必要だし、
でも確かに、あんなタイヘンだった資料が、
立体的に読めだす瞬間っていうのがある。
わたしは自分の体でそれを知ってるなって思った。
その快感をしってるから、
快感って敢えて書くけど、
なんかタイヘンそうな題材だけどやってみっかな、
という気持ちになれるんだと思う。

2019年の初めに、
ロシアに行った。
モスクワからサンクトペテルブルクを回り
そこからウクライナに飛んだ。
チェルノブイリのツアーに参加するためだ。
今回の火種になったようなことは、
わたしが知らなかっただけで当時からあったらしく、
そういえば何度も、
ガイドツアーのガイドさんが、
「ソヴィエト・システム」という言葉を使っていた。
英語が堪能じゃないわたしにも、
複雑なものを孕んでいるんだな、と分かるような
言い方と説明だった。

ちゃんと調べずに3年が過ぎた。

戦争が始まる少し前、
キーウから特派員のひとがレポートしていて、
あ。ここわたし歩いたじゃん、
ホテルこの近くだったじゃん、
と、とつぜん思い出した。

アッというまに、戦争が始まった。
もっとちゃんと勉強しておけばよかった。
当時は、チェルノブイリのことを勉強しなおしたりするので、
手一杯で、だいたい満足してしまってた。

ダメじゃん、と思うけど、
ダメだからほっといていいってもんでもないなあ、
と思って恥を忍んで調べている。
でもわたし、キエフもモスクワも行ってるから、
調べててもなんとなく理解が早い。
そもそも、
ロシア・アヴァンギャルドを書いているので、
ロシア革命からスターリン、
そこからペレストロイカへの流れも
理解しないと書けない戯曲だったし。
そして、
チェルノブイリに行ったことはやっぱりすごく大きくて、
わたしの身体性を無条件に揺り動かす。

話変わって。

よく、シリアのこととかが引き合いに出されて、
なんでシリアや中東のことは興味持たないのに、
なんでウクライナだけ、という言葉を聞く。

そういう意味なら、
ウクライナとロシアの緊張関係については
まったく知らなかったわたしは、
シリアについてはわりと調べてて、
中東についてはまあまあわかっている。
と思う。
あくまでまあまあくらい。
それは、9.11のときに、
石油の利権の問題から解き明かしていた番組を
見たからというのも大きい。
あ。そういうふうに戦争って分析しなくちゃダメなんだな、
って知った体験だったから。
そこからドキュメンタリー映画見たり、
本を読んだり、
日々の習慣みたいになっている。
日本の人と結婚されたシリアの方のお話を
聞きに行ったこともある。

だけど、そもそもイスラム教がよくわからないので、
それがゆがんだ形になったISのことは、
知識としてはわかっていても、
なかなか身体に落ちてこないところはある。
なんでアレッポがあんなことになっているのか、
理不尽さしか感じられない。
石油の利権を巡る貧富の問題が、
宗教戦争のかたちを借りて噴出してるんだろう
アメリカ主導のグローバル経済の歪が、
中東を切断していく。
それはわかる。
でもしかし。

ユダヤ・パレスチナ問題が、
世界にものすごく影響を与えているのは、
わかっている。
でも、イスラエル建国がなぜできてしまったのか、
パレスチナのひとたちが
パレスチナ自治区という、
時にパレスチナ・ゲットーと呼ばれる閉鎖地区に、
閉じ込められているのはどうしてなのか、
現象としては理解できても、
根本的なところが、
いくら読んでもわからない。
正当性がまったく感じられない。
自分がその立場だったら、
とても耐えられない、という共感性が、
わたしをその問題に留めている。

ロシアのウクライナ侵攻も
理不尽さの質は似ている。

なのに。
すごく驚いたのは、
シリアのアサド大統領が、
ロシアに対して連帯するみたいなことを言ってて、
え。。。え。。。どういうことって混乱した。
理不尽な侵攻にあってる者同士、
世界でいちばんウクライナのことに
共感を持ちそうなシリア。
なのに。え。プーチン支持?
アサドさんってISのひとだっけ?って調べなおした。
どうやら、不当なテロリズムから国を守るため、
プーチンさんがいちばん協力してくれたから、
という理由らしい。
ウクライナがシリアみたいになっているって思うのは、
遠い日本にいるわたしだから思うことで、
国の状況とか国交の状態とかでいろいろ変わるんだな。

と思った。

話がズレたけど。

誰かをまったく責めずにこういうこと書くのは難しい。
シリアのときには言わないのに、
イエメンのときには言わないのに、
ミャンマーで何が起こってるか知らないのに、

ウクライナだけ、とくべつ扱いはどうしてですか。

という気持ちはよくわかる。
どの出来事も、
知ってしまえば心あるひとであれば、
あまりの理不尽さに震えることばかりだから。

でもまずそれ、
(知ってる人のほうが)
少し耐えようよって思う。

そんなこと書いてるわたしも。

昨日、クイズ番組で、
アウンサンスーチーさんが正解っていうクイズを
やっていた。
わたしはちょっと身が竦んで、
いま、それが正解のクイズをやるのに、
ミャンマーの状況は、一言も説明されないんだ、
と絶望に近い気持ちを抱いた。

だから説明する。

アウンサンスーチーさんは非暴力を掲げて、
軍政だったミャンマーを民政政治へと導いたひとだ。
しかしそれを良しとしなかった軍がクーデターを起こし、
拘束された。
彼女に対してはいろいろな言説があるから調べてほしいけど、
少なくとも、今、この瞬間に、
珍名さん的にクイズに出していい人じゃない。

だから説明できることはするし、
わからないことは調べる。
調べても正解が出てこないことはよくある。
インターネットは難しい。
けどなかったらきっともっと世界は遠い。

知ってるひとは知らないひとにシェアしてく、
シリアに興味持ってないのに、
ウクライナ(流行)に乗るなんて、
という文脈じゃなく伝えること、
は大切だと思う。

ひどいよね。ウクライナ、でも同じようにね、
と話し始められたら。

わたしの生涯の一冊と言っていい本があって、
それは、ファン・ゴイティーソーロの
「サラエヴォ・ノート」
という本だ。
戦火のサラエヴォを
知識人および欧州諸国が見捨てている、
と、自らサラエヴォに赴き
静謐な筆致で描いたルポルタージュだ。

そのサラエヴォ・ノートの中に、
インテリジェンスとは、
知識のことではなく、
知をよりよきように運用することだ、
と書かれていて、
日本でいうインテリって言葉とは
そもそも哲学が違うんだな、と思った。

繰り返す引っ越しの中、
どこかにやってしまったけど、
読み返そうと思い注文した。
そのうちに届く。
いま読みたい本だ。

そのインテリジェンス、
という懐かしく大切な言葉と、
じつはつい最近、再会した。
それは、6月にやる公演、
登戸研究所の資料のなかでだ。
陸軍中野学校、
そして登戸研究所は、
前者が諜報活動のための人材教育、
後者が諜報活動のための様々な研究を行った場所だ。

そして、インテリジェンスという言葉は、
そこを運営していくための大方針のなかにあった。

実際、そのふたつの組織は当時の日本としては
例外的なほど独立と自由が推奨された場所だった。
厳格な守秘義務はあったが、
それ以外については、自主性が重んじられ、
ある意味、理想的な職場環境が維持されていた。
知的水準が高いひとたちの集まりだったので、
人間関係も概ね良好だったようだ。

しかしそこでやっていたのは、
生物兵器を含む戦時研究だ。
インテリジェンスってそもそもなんだ、と
自分の足元が崩れていくような感覚を覚える。

まとまりなく長くなった。
でもこのままにする。

無知であることはたぶんそんなにいいことではない。
ましてや誇るべきことでは。
でも知らないことは罪なんて言葉も、
なんだかちょっとしっくりこない。
あーあ、って思いながら調べて、
シェアすることも知の運用だし、
具体的に行動することも知の運用だ。

でも陸軍中野学校も
インテリジェンスの旗掲げてたんだぜ
(詩森の知識 NEW)ということを、
集合意識のなかでは、
言葉なんて
いくらでも好きに解釈できるんだから、
ってことを、
心の片隅に置いて進んでいく。

いつから知ったっていい。
それが今日だっていい。
シリアのことを知らなくても、
ウクライナのことを知っててもいい。

でも。最近SNSで読んだ、
シリアのことよりウクライナに心奪われるのはしょうがない。
だってウクライナでは子供が死んでるし、
自分たちとおんなじような(西欧化)した生活してる人
がいるから、
っていうのはわたしは賛同できないけれども。

仕方なくないよ。って言いたい。
ちゃんと知れば、
きっと同じように心は動くよって伝えたい。

ただそれを書きたくなる気持ちもわかったりはする。
子供の半分が自分の家を出ざるえなくなってる、
避難所になった劇場が爆破された、
こどもの病院が爆撃されている、
心がはりさけそう。わたしもそうです。
なのにシリアは、イエメンは?
イラクは?パレスチナは?
なんでウクライナばっかり特別扱いするって、
あなた間違ってる、
って言われたら、それは、辛いよねって思う。

知らないってことを責め立てても、
心の窓は閉じてくばかりだ。

でも、もしわたしたちのいる場所が、
侵略の対象になり、
なのに世界中から無視されてる状況で、
ほかの国が侵略されて、
そこばっかり難民受け入れとか、
経済支援とかされて、
日本はよく知らないし、
自分たちと生活様式が違うから、
仕方ないよ、って文章を読んだら、
どんな気持ちになるだろうか。

自分ごととして捉えられる範囲を、
ちょっとずつ広げていくことでしか、
解決しない問題がいま、
世界でたくさん起こっている。
日本国内でももちろん。

去年の秋から、
取材・執筆の時期で、
それがまた当社比重めの作品ばかりで、
窒息しそうだったので、
夜中にブログを書いてみる。

トップ画像はチェルノブイリの
廃墟となった幼稚園の近くの雑木林。
ガイドさんが、こんなのは、あとから来た人がやった
演出写真です、
放射能で人形の手足は取れない、と言ってた。
そのいちまい。

Secret War-ひみつせん-

本日情報公開されました。
「機械と音楽」でご一緒した三浦透子さんと
また一緒に作品を作れるという意味では待ちに待った公開ですが、
こんな厳しい時期に、
小児病院が爆撃されて子供たちががれきの下敷きになっている
というニュースが報道された日に、
この作品の情報を公開するということになりました。
でもこうしてお客様にお知らせしたので、
必死でやるしかありません。

真摯に向かってくれると信じられるメンバーが
集まってくれたと自負しています。
初めましての方も多いんですが、
作品に対して、
事務所の方まで真剣に考えてくださって、
この作品だから、
と集まってくれた方々です。

出演を決めてくれてから、
あれよあれよという間に、
世界規模の俳優になりつつある三浦透子さん。
なんでもできるわけじゃないけど、
詩森さんの作品の真ん中はわかります、
と言ってくれた彼女と、
作品を作れること、
本家アカデミー賞も視野に入っているなか、
さすがのわたしもプレッシャーですが、
そんな彼女にふさわしいものにしなければ、
という思いもきっと作品を後押ししてくれるでしょう。
それはたぶん、今見ていただく価値のある作品と
いうことだからです。

坂本慶介さん。
阿佐ヶ谷スパイダースでも活躍されていますが、
ちょうど来年度の新国立劇場フルオーディション企画
「エンジェルス・イン・アメリカ」のジョー役で
出演が決定しています。
あの錚々たるメンバーがオーディションで?
というのも驚きますが、
その中でジョー役。
凄いね、って思ってしまいます。
わたしアッカーマン演出でフル上演見ているので、
いまからほんとうに楽しみです。
先日面談させていただきましたが、
もうすでに資料等当たってくださってて、
いろいろお話できて心強かった。
共通の知人曰く
「演出家がみんな大好きになっちゃう」そうなので、
その魅力思う存分浴びてみます。

そして宮崎秋人さん。
演劇に真摯な方でとてもいいよ、とは聞いていたんですが、
ご縁が繋がり出ていただけることになりました。
先日、マーキュリー・ファーに出演されていて
拝見してきたんですが、ビックリしました。
若い男性の役と思ってみていたので、
あれ、どの役かなと思ったら、
どう考えてもいちばん難しい役を愛あるかんじで
演じられてました。素敵でしたね。
良き舞台俳優と良き時期に組ませていただけること
大切にしたい。

松村武さんは、実は、
「海辺の鉄道の話」でご一緒できるハズでした。
喉の不調で出られなくなり、
松村さんのことを思い続けて書いた脚本だったので、
ほんとに残念で、
いつかと思っていて、ここで実現しました。
正義と悪ではくくれない、
くくりたくない戦争の話なんですが、
そこを担ってくださると期待しています。
お互いやっとやれますね、
という共同作業になると思っています。

北浦愛さん。
こちらもご縁が繋がり出ていただきます。
初タッグです。
「誰も知らない」の京子役だそうです。
えー。あの京子ちゃんなの?と驚きました。
だって少女の面差しは残したままで、
とても素敵な大人の俳優さんになっていたから。
透子さんの同僚タイピストを演じてくれます。

森下亮さん。
気づいたらこちらも全国区の方になってました。笑。
わたしたちからしたらもう何年もア・ラ・ポテト大使でしたが、
非公式だったんですね。
ある意味遅すぎる。
そんな大使は、こういうお芝居では熱量で、
あとやっぱり哲学で、
支えてくれる頼もしい俳優でもあります。

佐野功さん。
ネタバレになっちゃうので多くは書きませんが、
ある意味1対8の1の役で出演です。
そういう役が似合うので楽しみにしていてください。

ししどともこさん。
少女っぽいイメージが強くて、
そういう役をずっと書いてきたんですが、
今回は、大人の女性です。
ひたむきで頑なな個性は生かしつつ、
いつにないししどさんを書いています。
どういう風に演じてくれるかな。
楽しみです。

そして!
「All My Sons」で初タッグを組ませていただき、
いまは勝手に親友のように思っている大谷亮介さんが
大切すぎる要の役で出演してくださいます。
前回は、あの!大谷さんが!出演してくれる!
と緊張もした気がしますが、
今回は勝手に親友の気持ちなので、
きっといいお仕事ができると思っています。
大谷さんが演じてくれるから、と、
かなり、攻めて書いています。

総勢9名。
この9名で、戦います。
きっといい戦いになると思います。
戦うって言葉にナイフで裂かれる気持ちですが、
敢えて。

演劇の稽古場は戦っていい。
戦います。

環七を自転車で走ると-「すこたん!」終演-

感染状況が最悪だった8月。
このまま拡大するようだったらまた中止するしかないのかも、
というなか、ギリギリで情報公開し、
公演自体は比較的安心な時期に行うことができました。
それでも無事に終わることは奇跡にも思えます。
ご来場いただいたお客様、
関わってくれたスタッフ、
そしてなにより俳優すべてに感謝を。

環状7号線を自転車で走ると、
いまも心の片隅がいろんな思いで浸されます。
わたしは長距離サイクラーで、
いまでもだいたいの場所に自転車で行きます。
でもたぶんいちばん走ったのは、
環状7号線だと思うんです。
高円寺のあたりから下北沢まで。
中央線・青梅街道・立正佼成会・方南町・ドンキホーテ・甲州街道
わたしにとってのランドマークを越えて行きます。
かえりもそれをひとつひとつ数えながら、帰るんです。
アップダウンや信号のひとつひとつを暗記しています。
その道を、
いつもいっしょに自転車で走ったひとのこと。
ひとりのときもそこを越えるたびに、
そのひとのところに帰っていくということ。
一刻も早く会いたくて一生懸命ペダル漕いだ。
あんなに長くいっしょにいたのにあんなに会いたいって、
なんだか思い出しても自分のことではないみたいです。

自転車ゆえのトラブルや、
自転車だからこその自由さや。
よっぱらって遭難してるそのひとを、
自転車で東京を横断して救助しにいったときのこととか。

年を取ればそれなりにひとを愛した記憶はあるものですが、
「すこたん!」に出てくる4組のひとたちの物語は、
ほかにもたくさんあったはずの恋とか愛の、
勝手なくらいのたったひとつを描いたものです。
わたしにとっての環状七号線のような。

ノゾムくんのファーストキスの相手は誰だかわからないし、
ほかのひとも、
コウキくんの死んでしまった恋人の話くらいしか、
でてこない。
たったひとつのとくべつを、
とくべつなんだということの意味を
大切に大切に書いたつもりです。

それが男性同士ということだけで、
さらにとくべつなことになってしまう。
そのとくべつがなぜか苦しさにも繋がる。
すこしでも先にいけたらな、と思います。

大切だった作品の幕が下りました。
毎日、劇場に入ってもしつこく話して、
ちょっとでも前に行きたくて、
なんだこの人ってみんなおもっていたかもしれません。
よくつきあってくれました。感謝です。

サジェスチョンをだすたびに、
頷いて、ぜったい演技を更新してくれた鈴木勝大くん。
当事者性の高いものをやるときによく俳優が口にする
「当事者じゃないわたしにはわからないけど」という言葉を
ついに一回も発しませんでした。
ホンモノの簗瀬さんより葛藤しないと、と、
俳優の仕事の真ん中から
逃げない姿勢を貫いてくれました。

そして、ずっと年上なはずなのに、
おそらくリュウタとサトルであるために、
常に勝大くんについていくよ、という姿勢を崩さず、
やっぱり最後まで更新しつづけてくれた近藤フクさん。

このおふたりを真ん中に、
どの方も最後の回までほんとに
細かいニュアンスを詰め続けてくれました。

立ち上がるまでは苦労したけど、
ほんばんになったらいちばん安定度バツグンで、
あまりの可愛さに毎回毎回告白シーンがうまくいくたび
おなじだけ新鮮によかったーと思ってしまう
ノゾムくん(河野賢治)とタクミ(辻井彰太)くん。

最後まで一生懸命共に生きる方法を考え続けた
コウキ(工藤孝生)くんとケンタロウ(中西晶)くん。
今回、周りのひとの恋模様はぜんぶ創作なんですが、
コウキくんの前の恋人の話だけは取材で聞いたお話を
ほぼそのままお借りしました。
というかそこから考えていったふたりの物語でした。
支え合うことが美しかったり、難しかったり。
傷ついたりもしたと思うんですが、
それと闘いながら諦めず演じてくれました。
いつも舞台のうえのふたりはとてもきれいでした。
あのきれいさは、でも演じているとわからないよね。

じつはミリ単位まで演出させてもらったハヤタ(佐野功)さん
ここはー、グッと近づくというより遠ざかるかんじでー、とか
たぶん他のひとが聞いてもまったく何言ってるかわからないでしょう。
年月です。
そして相手役アオイ(吉田晴登)くん。
ムズイー、ムズイー、といいながらバチッと更新してくる
プロフェッショナリズム。
若いけど頼りになる俳優さんでした。
芝居部分のラストシーンは、彼と近藤フクさんでした。
辿り着いた場所で、他者の生きるちからになっているんだと、
イトウさんとヤナセさんに感じてもらえるステキな演技だった
と思います。すごい説得力でした。

そしてショウジ(大内真智)さんとツダヌマ(根津茂尚)さん。
複雑な状況の中、エゴではないものを共有することで
結びついてしまった。
たぶんわたしがわたしだからという人物造形です。
とてもたいせつに演じてもらいました。
ツダヌマさんが最後、相手を見るところがとても好きでした。
根津さん、やっぱりいいよね。(個人的感慨)

辿り着いた千穐楽。ノートを持たずに見た一回。
わたしにとって忘れられない回になりました。

この稽古場からこの作品を作れたことを、
大切に思っています。
俳優のみんなも!みんな大切すぎて、
どう言ったらいいかわからないくらい。

ほんとうにありがとうございました!
また劇場でお会いしましょう。