演劇の旅-イギリス編 その2

最後の一本は、迷わず決めました。
「夜中に犬に起こった奇妙な事件」
ナショナルシアターライブでも、
日本でやった上演も見逃していて、
でもどうしても見たかった作品です。

わたしは長く自閉症の子たちと関わっていました。
宿泊体験のお手伝いをするボランティアを
10年近くやっていました。
自閉症の子だけではなく、
ダウン症の子や、
知的障害の子たちが、療育といって、
自分でできることを増やしていきましょう、
という施設でのお手伝いです。
10年やったと言っても春夏秋冬、
一泊とか2泊するだけのお手伝いなので、
そこまで大層なものではありません。
それでも行けなくなってもうだいぶたちます。

なので、知的障害のある子どもが主人公のものは
どうしても観たいと思ってしまいます。
最近だと、
「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」が、
高機能自閉症であるアスペルガーの少年の話でした。
あの映画もとてもいい作品でした。

自分の作品にも何回か自閉症の人が出てきたことがあります。
障害に付加価値を付けていないかと問われれば
自信がありませんが、
わたしは、彼らの世界がとても好きなんです。
とても豊かなのにヘンクツで、
いろんなことがうまくいかない。
でも彼らの時間を共に過ごして、
わたしの知らない世界の見方を
たくさん分けてもらいました。
それは演劇人としてのわたしの人生をいまも支えてくれています。

わたしが行っていた施設の子たちは、
知的に遅れもある子たちです。

遅れのある子もない子も
サヴァン症候群と言って、
天才的な能力を持っていたりもします。
(全員がもってるわけではありません)
有名なところだと「レイン・マン」の
ダスティン・ホフマンの役がそうですね。
記憶力が凄かったり、
わたしがかかわった子だと一回聞いた曲は、
ピアノで弾けちゃう子がいました。
運指はメチャクチャですが、
そしてまったく言葉がないくらい重度の自閉症でしたが、
音楽に関しては天才でした。

「レイン・マン」のチャーリーは高機能ではなくて、
カナータイプの自閉症な気もします。
自閉症も知的な遅れを伴うカナータイプの自閉症と
知的には問題ない高機能の自閉症があります。
分類に意味はありませんが、
彼らの生きづらさを理解するためには、
わたしたちが彼らの感じ方や障害の特徴を知る必要があります。
彼らはひとの感じ方がわからないという障害です。
歩み寄るのは神様に他者への想像力を持たせてもらった
わたしたちがやるべきことです。

前置きが長くなりました。
「夜中に犬に起こった奇妙な事件」は、
数学に長けた、おそらくアスペルガー症候群
と思われる、少年が主人公です。
児童文学が原作なので、
今回のために読んだのですが、
これがちょっとびっくりするくらいのいい小説でした。
電車を何度も何度も乗り過ごしながら、夢中で読みました。
構造は「アルジャーノンに花束」に似てますが、
もっとリアルで、ちょっと怖くて、
とても愛おしい物語です。

『戦火の馬』を観てから気づいたのですが、
演出が同じ、マリアンヌ・エリオットさんという女性演出家でした。
(『戦火の馬』はトム・モリスと共同演出)
あの原作を、同じ演出家が、と思うだけで心が躍ります。
朝、ストークオントレントからロンドンに戻り、
預けてあった荷物をとって劇場へと向かいます。
→なぜなら劇場からまっすぐパルセロナに行くから。
我ながらよーやるよ、と思いますが、
まあ、ちょっと体力がね。ひとより余計にあるんですよね。

その日はマチネで、
劇場に行ってビックリしたんですが、
お客さんがほぼ学生!!
おそらく学校の授業の一環なんですね。
あとはわたしたちと、
もうお仕事はリタイヤしたのかな、っていう年配のご夫婦。
なるほど~。今日はこういう観客層なのね。

で、始まったんですが、子供たち、
かなりマナーが悪いです。
ずっとお菓子とか食べてるし。
(食べていいんだ。。。)
喋ったりするし。
こちらも集中できない環境ではあるんですが、
俳優はもっとタイヘンですよね。

でもまったく途切れません。

それにしてもイギリスの子供たちは、
こんな世界最上級の舞台を授業で観て育つんですね。
そりゃあ、演劇好きになりますよね。
凄いなあ。

肝心の舞台ですが、
「戦火の馬」ほどの特別な体験ではなかったですが、
とても素晴らしかったです。
犬が殺されるオープニングから釘付け。
俳優のフィジカルでどんどんシーンが移り変わり、
まったく飽きることがありません。

そして、やはり俳優が凄い。
心の機微ってここまで伝えることができるんですね。
どの人のことも、
一瞬出てきてそれきり出てこない役も、
なにを動機として、
どうしてその行動をするのかぜんぶわかる。
障害を含めて愛しているはずの我が子を
障害ゆえにもてあます両親。
どちらもきちんと成り立たせている演技が、
素晴らしかったです。

2幕になると、クリストファーがロンドンを目指すので、
アクロバットも駆使して、
移動のシーンが繰り広げられます。

壁を垂直に走る!!
下で支える俳優たちのカッコよさたるや。
ほんとに唖然とするくらい凄い。
プロジェクションもたくさん使われる作品ですが、
あくまで人間の身体の補助線です。
演劇で見せる、演劇に不可能はない、という気概が、
ただごとではないと思います。

子供たちいちばんの心が動いたポイントは、
ホンモノのゴールデンレトリバーの子犬が出てきた瞬間な気がしますが、
ぜんたいもとても楽しんでいたと思います。
凄い拍手でした。
でも劇場で、ポテトチップスはやめたほうがいいと思うぞー。笑。

技術的にも予算的にももちろんここまでのものは作れませんが、
演劇に不可能はない、という気概だけは負けたくないな、
と思います。
そしてシンプルな俳優の力は、
すぐにでも目指さなければ。
いや。ずっと目指してはいるけれども。
もっともっと先があるな、と思います。
先があるのはステキなことです。
頑張らせていただこうと思います。

この演出家さんの作品は、
すべて観たいな、と思いました。
まずはエンジェルス・イン・アメリカをなんとか観たい。

これで9本。
ヨーロッパの演劇をここまで少し神格化していたかもしれません。
つまらないものはつまらなかったし、
好きじゃないものは好きじゃなかった。
でも、好きと言えるものもたくさんあって、
それは人生でも最上級の体験をもたらしてくれます。

ひとが、からだひとつで、世界と立ち向かう演劇は、
成功させるのが、とても難しい。
でも、演劇のおもしろいはすべてのもののなかで、
いちばんおもしろい。
わたしは、むかしからそう思ってきました。
もちろん音楽をやる人は音楽を、
映画を作るひとは映画を、
そのように思うのだと思います。
でもわたしは演劇を創るひとなので、
演劇はいちばんおもしろい。それでいい。
そう思います。

これからも東京で演劇を創りたいと思っていますが、
観たいと思ったものはどこであっても観に行けるんだ、
と分かってしまったので、
これからはもう少し積極的に、
外に飛び出し、演劇を観たいな、と思いました。

わたしたちの演劇の旅は終わりました。

この旅で得たものを、
東京の演劇に渡したい。
稽古が待ち遠しい気持ちです。

読んでくれてほんとうにありがとうございました。
機械と音楽、まもなく稽古開始です。
チケットはまだまだありますが、
じつは、稽古も始まってないのに、
15日土曜日の夜と、
16日日曜日の昼の回、
お急ぎください、となってきました。
週末観劇予定の方はお急ぎください。

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お待ちしています。

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詩森ろば
serial number(風琴工房改め)の劇作家・演出家です。

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