環七を自転車で走ると-「すこたん!」終演-

感染状況が最悪だった8月。
このまま拡大するようだったらまた中止するしかないのかも、
というなか、ギリギリで情報公開し、
公演自体は比較的安心な時期に行うことができました。
それでも無事に終わることは奇跡にも思えます。
ご来場いただいたお客様、
関わってくれたスタッフ、
そしてなにより俳優すべてに感謝を。

環状7号線を自転車で走ると、
いまも心の片隅がいろんな思いで浸されます。
わたしは長距離サイクラーで、
いまでもだいたいの場所に自転車で行きます。
でもたぶんいちばん走ったのは、
環状7号線だと思うんです。
高円寺のあたりから下北沢まで。
中央線・青梅街道・立正佼成会・方南町・ドンキホーテ・甲州街道
わたしにとってのランドマークを越えて行きます。
かえりもそれをひとつひとつ数えながら、帰るんです。
アップダウンや信号のひとつひとつを暗記しています。
その道を、
いつもいっしょに自転車で走ったひとのこと。
ひとりのときもそこを越えるたびに、
そのひとのところに帰っていくということ。
一刻も早く会いたくて一生懸命ペダル漕いだ。
あんなに長くいっしょにいたのにあんなに会いたいって、
なんだか思い出しても自分のことではないみたいです。

自転車ゆえのトラブルや、
自転車だからこその自由さや。
よっぱらって遭難してるそのひとを、
自転車で東京を横断して救助しにいったときのこととか。

年を取ればそれなりにひとを愛した記憶はあるものですが、
「すこたん!」に出てくる4組のひとたちの物語は、
ほかにもたくさんあったはずの恋とか愛の、
勝手なくらいのたったひとつを描いたものです。
わたしにとっての環状七号線のような。

ノゾムくんのファーストキスの相手は誰だかわからないし、
ほかのひとも、
コウキくんの死んでしまった恋人の話くらいしか、
でてこない。
たったひとつのとくべつを、
とくべつなんだということの意味を
大切に大切に書いたつもりです。

それが男性同士ということだけで、
さらにとくべつなことになってしまう。
そのとくべつがなぜか苦しさにも繋がる。
すこしでも先にいけたらな、と思います。

大切だった作品の幕が下りました。
毎日、劇場に入ってもしつこく話して、
ちょっとでも前に行きたくて、
なんだこの人ってみんなおもっていたかもしれません。
よくつきあってくれました。感謝です。

サジェスチョンをだすたびに、
頷いて、ぜったい演技を更新してくれた鈴木勝大くん。
当事者性の高いものをやるときによく俳優が口にする
「当事者じゃないわたしにはわからないけど」という言葉を
ついに一回も発しませんでした。
ホンモノの簗瀬さんより葛藤しないと、と、
俳優の仕事の真ん中から
逃げない姿勢を貫いてくれました。

そして、ずっと年上なはずなのに、
おそらくリュウタとサトルであるために、
常に勝大くんについていくよ、という姿勢を崩さず、
やっぱり最後まで更新しつづけてくれた近藤フクさん。

このおふたりを真ん中に、
どの方も最後の回までほんとに
細かいニュアンスを詰め続けてくれました。

立ち上がるまでは苦労したけど、
ほんばんになったらいちばん安定度バツグンで、
あまりの可愛さに毎回毎回告白シーンがうまくいくたび
おなじだけ新鮮によかったーと思ってしまう
ノゾムくん(河野賢治)とタクミ(辻井彰太)くん。

最後まで一生懸命共に生きる方法を考え続けた
コウキ(工藤孝生)くんとケンタロウ(中西晶)くん。
今回、周りのひとの恋模様はぜんぶ創作なんですが、
コウキくんの前の恋人の話だけは取材で聞いたお話を
ほぼそのままお借りしました。
というかそこから考えていったふたりの物語でした。
支え合うことが美しかったり、難しかったり。
傷ついたりもしたと思うんですが、
それと闘いながら諦めず演じてくれました。
いつも舞台のうえのふたりはとてもきれいでした。
あのきれいさは、でも演じているとわからないよね。

じつはミリ単位まで演出させてもらったハヤタ(佐野功)さん
ここはー、グッと近づくというより遠ざかるかんじでー、とか
たぶん他のひとが聞いてもまったく何言ってるかわからないでしょう。
年月です。
そして相手役アオイ(吉田晴登)くん。
ムズイー、ムズイー、といいながらバチッと更新してくる
プロフェッショナリズム。
若いけど頼りになる俳優さんでした。
芝居部分のラストシーンは、彼と近藤フクさんでした。
辿り着いた場所で、他者の生きるちからになっているんだと、
イトウさんとヤナセさんに感じてもらえるステキな演技だった
と思います。すごい説得力でした。

そしてショウジ(大内真智)さんとツダヌマ(根津茂尚)さん。
複雑な状況の中、エゴではないものを共有することで
結びついてしまった。
たぶんわたしがわたしだからという人物造形です。
とてもたいせつに演じてもらいました。
ツダヌマさんが最後、相手を見るところがとても好きでした。
根津さん、やっぱりいいよね。(個人的感慨)

辿り着いた千穐楽。ノートを持たずに見た一回。
わたしにとって忘れられない回になりました。

この稽古場からこの作品を作れたことを、
大切に思っています。
俳優のみんなも!みんな大切すぎて、
どう言ったらいいかわからないくらい。

ほんとうにありがとうございました!
また劇場でお会いしましょう。

詩森ろば
serial number(風琴工房改め)の劇作家・演出家です。

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