万全ではありません

感染拡大が続いています。

感染症対策万全で、
と言葉にするのはカンタンだけど、
正直言ってこれは運でしかないな、ということを
実感した先日の公演での経験を少し書きたいと思います。

うちの場合、
俳優・スタッフ共、稽古場には基本
PCR検査をした方しか入れない、
ということになっていました。
いつもならいらっしゃるマネージャーさんも
検査していないと入れません。

不要不急の外出、会食も再三アナウンスして、
自粛してもらいました。
大人の座組なので基本守ってくれたと思います。

なので比較的安全なハズなんですが、
稽古場は、
検温して、
毎日消毒をして、
換気をして、
手洗をして、
モノの消毒もコマメにやって、
マスクも入口でしてきたヤツは交換して、
トイレにも殺菌用の紫外線ライトつけて、
足ふきマットもやって、

とやっていました。

PCR検査も基本としては2回。
あと、もう今回は、ということで、
撮影等、芸能の仕事以外は、
基本バイトもしないでもらう体制です
→もちろんギャランティはもともと、
全員にお支払しています。
しかし、今回は別仕事を入れられないので、
ベースアップしたというかんじです。
(これ書かないでおくか、と思いましたが、
感染症対策の厳しさを知ってもらうため
書くことにしました)

稽古場は天井が高く広く換気もよく、
比較的少人数の稽古。
密になりようもありません。
たまたま大きな演目だったので取っていましたが、
とてもいい環境でした。

しかし、実感として万全、
とはまったく思えませんでした。

ほとんどすべての方が家族と同居。
小さなお子さんがいる方もいます。
合間に撮影も入ります。
マネージャーさんと稽古場外で会わないなんてできません。
公共交通機関を使用しないと稽古場に来られません。
そこで感染するしないはコロナの特性を考えた場合、
ただ「運」です。

コロナはモノからは基本的にはうつりません。
基本としては人間同士です。
タンパク質なので、栄養とれない場所だと解体されちゃう。
ドアノブなどへの滞留期間が長いと言われてますが、
床にも飛沫が飛ぶので消毒必須ですが、
でもこの稽古場にウィルスがつくとしたら
「感染者がいる可能性が高い」
ってことなんですよね。
だって、稽古場の入り口で出入りするたび
手指消毒して着替えをしてるんだから、
ウィルス持ち込みは、
体内保有でないと難しい。

そして稽古場に「感染者」がいたら、
その人が無症状で、
でもウィルスの排気量は高かったとしたら
感染しない、濃厚接触者にならない、
は基本不可能だと思いました。
フェイスシールドはしていて、
こまめに消毒も皆さんしてくれていましたが、
ある時点から、
(PCR全員陰性を確かめたうえで)
マスクは話し合ってしないことにしました。

でもこのマスクをしてない時点で、
感染者がいたらたぶん不可能なんです。
フェイスシールドは、
自分がリスクの多い仕事をするときに、
マスクと併用して曝露を避けるためのもので
長時間の感染予防の用途には使えません。

ましてやマウスシールドは、
テレビとかで付けていると、
予防効果がありそうに見えるので
止めた方がいいのでは。。。
とわたしでも思ってしまうくらいのものです。

そのリスクも説明したうえで、
マスクはしないという俳優さんの
合意がありました。

演出も最初は距離とるか、とか考えてましたが、
作品的にも俳優たちの資質的にも
まったく無理でした。

できる限りのコロナ対策、経済的にがんばる、
ここまではできますが、
俳優のこころと身体の自由まで制限したら
稽古なんてできないということがよく分かった体験でした。

フェイスシールドを取って初めての通し稽古。
躍動する俳優の身体を見せたかった。
誰より身体性に敏感なハズの彼らに、
こんなにもたいへんなことをさせていたのだ、
ということをわたしも思い知りました。

舞台からお客さまにうつさない。
客席から舞台へうつさない。
スタッフと俳優でうつさない。
お客さま同士をできるかぎり安全に。
この対策はかなりしっかりやりましたが、
俳優間でうつさないは、
リスクを下げることはできても
基本不可能だというのがいつわらざる実感です。

主催者としては直前の検査で出たら中止にする、
という選択肢しかないなと腹をくくりました。

そんな中、PCR検査を援助いただけました。
素晴らしい試みで経済もですが、
心を助けていただきました。

PCRで陰性だったからと言って安心したひとなんて
いなかったと思います。
陰性なのだから、よりきちんと気を付けて、
本番思う存分やりたいと誰もが思っていたはずです。

ここから先もワクチンができるまで、
治療が確立するまで、
検査は必須でしょう。
演劇以外のすべてを諦めて稽古をしなければならないでしょう。

それでも、これは、運です。
例えコロナでなくても誰かしらに熱発があったら止まる。
稽古場でも劇場でも入るときに検温するので、
誤魔化せません。
止める、と決意していないと、
止められないので、決意していました。
それしか、できなかった。

たった10人の座組ですが、
自分たちのカンパニーだけで、
毎日劇場にいる人が20人以上です。
劇場の受付さんもいます。
むしろなにもなく終わるほうが不思議でさえあります。

公演が終わってもたくさんの初日があり、
たくさんの千秋楽がある。
すべてが自分ごとです。
いつまで続くのか。
気力が必要です。

ただし実感として、
「観る」という意味では、
劇場や映画館は比較的安全な場所だと思います。
(あくまで、比較的ですが。)

そして最後にこれだけは言わせてください。
それでもやっぱり舞台をやれてよかった。
立ち合ってくださったお客さまにとっても
そうあるように祈ります。

詩森ろば
serial number(風琴工房改め)の劇作家・演出家です。

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