演劇の旅-ベルリン編-

ドイツ年に素晴らしい演劇をたくさん見ました。
フォルクス・ビューネの『終着駅アメリカ』。
シャウ・ビューネの『人形の家』と『火の顔』。
ベルリナー・アンサンブルの『アルトゥロ・ウイの興隆』。
どれもわたしの観劇体験の中で、
記念碑的な作品ばかりです。
とくに、カストロフの『終着駅アメリカ』は、
生涯のベストと言える一本
(ほかにも何本かあるので、ベスト1ではない。
もしくは同率1位のうちのひとつ)
叶うものならもう一回観たいです。

なので、ベルリンでの観劇をとても楽しみにしていました。
しかし、わたしは痛恨の失敗をしたのです。
ベルリン滞在は月曜日と火曜日。
やっぱりいい演目は週末に多く、
オースターマイヤーもやってないし、
観たかった演目が前後に並んでしまっている残念さもあいまり、
なかなか選ぶことができませんでした。
距離的にはやや効率悪くなるけど、
ポーランドと逆にしておけばよかったと思っても、
あとの祭りです。

とはいえ、憧れのフォルクス・ビューネはいちおう取りました。
カストロフが芸術監督ではなくなってから、
停滞の時期を迎えているとは聞いていましたが、
あの劇場でお芝居を観ないで帰るのはやっぱりできないと思ったのです。

ベルリンもロシア同様、
基本的には劇場に俳優がついているかたちです。
カストロフがいなくなって、
カストロフ時代を支えた俳優たちも、
みんな、別の劇場に移ってしまったのだとか。

今日の演目は、
「裏切り者!」というタイトルで、
イプセンの『民衆の敵』を大幅にアレンジしたものです。
温泉の水が毒性の汚水だった。
しかし、村としては起死回生の産業ともなる温泉だったため、
隠そうとする人々と、
それを糾弾しようとする医師という構造はそのままに、
現代に置き換え、
滔々たる論争劇として再構築されています。

『民衆の敵』は、一度は演出してみたい戯曲です。
今回の観劇にあたって読み返しましたが、
やっぱり面白いし、
水俣や、イタイイタイ病と同じ構図を持つ
廃液による公害隠しという題材は、
恐ろしいくらいのアクチュアリティです。
イプセンはエンターテインメント性も高いので、
わたしに向いてる、と奢ったいい方かもしれませんが、
思います。
『民衆の敵』『ちっちゃなエイヨルフ』『野鴨』
ぜんぶやってみたい。

この芝居、現地の評価はそれほど高くないみたいなんですが、
わたしはすごく面白かったです。
最後、トランプが出てきちゃうくらい、
政治性と風刺を隠そうともしないお芝居で、
なんせ論争劇なので、
ドイツ語だと内容はまったくわからないのですが、
(内容がわかったら自分の政治的ポリシーとどう折り合いを
つけるか、という問題も出てくるかもしれないので、
また評価が変わるかもですが)
どの俳優もとぼけていて、軽やかで、
新しいクリエーションにノリノリというように見受けられ、
わたしはかなり楽しく観ました。
ドイツ語のレビューサイトによると、
とにもかくにもフォルクスビューネがまた
新作をクリエーションできているのがよいことと
書いてありましたね。
→翻訳ソフトつかってるので、ほんとにだいたいですが。
そんなに不遇な時代だったんですね。
どうやら新しい芸術監督に変わり、
新しいクリエーションを始めたところらしいです。
攻めてるフォルクスビューネが戻ってきた、
という理解でいいのかな、という観劇でした。

そして、こんな、
日本であれば若いひとでもワケわかんない、と言いそうな芝居を
国がお金を出して作っていて、
あらゆる世代の人がいて、
いろんなシーンで大喜び。最後は大きな拍手でした。

次の日は、
ほんとはシャウビューネに行きたかったのですが、
完売および信頼できる筋から
その日の演目はオススメできない、という情報を得まして、
最近ベルリンで評価が高いという芸術監督がいる、
マキシム・ゴーリキー劇場で、
「サロメ」を観ました。
「サロメ」がそんなに好きではないうえに、
ポスターが怖すぎて、

このサロメ男性です。
とても評価の高い俳優らしいです。
最後まで迷ったのですが、
ベルリナー・アンサンブルもそんなに惹かれる演目で
なかったのもあってコチラにしてみました。

サロメとは言え、そこはベルリン演劇。
超解体。再構成されています。
サロメ役の俳優さんが、
マツコ・デラックスみたいなひとで、
装置もキッチュ。

最初、幕があいて、
コロスが登場して、
→なぜかフルヌード。ドイツ演劇ではいろんな場合に
どういうわけかフルヌード。

あとで知ったのですが、
移民の俳優もたくさん受け入れてクリエーションしているそうで、
ドイツ語がは母国語ではない俳優もたくさん出演しています。
なので語り手役みたいな方は英語でした。

このコロスたちが面白く、
楽しく拝見していたのですが、
中幕があいて、さあこれから、という巨大装置が出てきたあたりから、
芝居のコンテキストをまったく見失ってしまいました。
英語字幕は出てるのですが、
ちょっと遠くて文字が小さかったので、まったく読めず、
もちろんドイツ語はわからない。
それがもちろんいちばん大きいのですが、
サロメがドラァグ・クイーンである意味が、
どうしてもわからなかったというのがわたしの敗因な気がします。
なんとなく1アイディアでそこまで深くないのでは・・・
という気がしてしまったのですが、
どなたかわたしに解釈教えてくださる方がいたら、
ぜひご教示ください、と言いたいです。

すっごいインパクトの装置ですよね。
そして、とても巧くておもしろい俳優さんなんですが、
わたしにはわからなかった。
言語の壁を超えることができませんでした。
ヨカナーンはあれ、いつかな、くらいのタイミングで
首を切られ、
サロメのクライマックスのダンスもないまま、終焉でした。
あの巨漢が踊りまくるクライマックスを
期待してしまっていたので、
あ。終わっちゃった。
というのが、正直な感想です。
しかし会場は熱狂的な拍手。
こちらも老若男女、ありとあらゆる世代です。
それがフルヌードの前衛劇に、
大熱狂。
その演劇シーン自体が衝撃的です。

やっぱりドイツ演劇は言葉がわかるか、
字幕がないともったいないことになってしまいますね。
ものすごく解体されているから。
自分の教養のなさが残念なドイツ2演目でした。

明日は観劇のメインコンテンツであるロンドンへと
向かいます!
書くのが楽しみ。そのくらいエキサイティングな
体験でした。
あんなに楽しんだのに、
書くことでまた楽しめる。
最高です。
あと少しだけお付き合いお願いいたします!

詩森ろば
serial number(風琴工房改め)の劇作家・演出家です。

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